2025年12月17日
──防水工事の現場から見た、注意すべきポイント
東京都江戸川区が、区内の戸建て住宅の屋根に 太陽光パネルを無料で設置する新会社「江戸川電力」 を、区と民間企業の共同出資で設立することが報じられました。
この取り組みは、再生可能エネルギーの地産地消を進め、
2050年の「カーボン・マイナス」達成 を目指す施策のひとつです。
2030年度までに855世帯、将来的には1万世帯規模への拡大が検討されています。
(※本記事は
「江戸川区、太陽光を無料設置 民家屋根活用で再エネ普及」
日本経済新聞ほか報道を参考にしています)
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太陽光無料設置のニュースを見て、防水屋として思ったことがいくつかありました。
今回のニュースを見て、個人的にはとても良い取り組みだと感じました。
電気代が高騰する中で、住民負担なしで太陽光を導入できる仕組みは、
江戸川区にとっても、住んでいる方にとっても大きなメリットがあります。
ただ、27年ほど建物の防水に携わってきた自分としては、どうしても 「その前に一つだけ確認しておいた方がいいことがある」 と感じています。
それが 太陽光を設置する屋上の防水状態 です。
それは、
「太陽光設置は、すべての屋上が同じ条件ではない」
ということです。
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※この記事で対象としているのは「陸屋根」です
ひとくちに「屋根」と言っても、
• 瓦屋根
• 金属屋根
• 陸屋根(コンクリート造・防水仕様)
など種類はさまざまです。
江戸ワークが主に手がけているのは、陸屋根(防水層がある屋根)。

そのため、この記事も 陸屋根の太陽光設置と防水 を前提にしています。
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太陽光設置は「防水層に直接関わる工事」
陸屋根に太陽光パネルを設置する場合、
• 架台の固定
• アンカー・金物の設置
• 配線の取り回し
など、防水層に直接影響する工事 が発生する可能性があります。
防水の状態が健全であれば問題ありませんが、
劣化が進んでいる場合、太陽光工事をきっかけに
• 雨漏り
• 防水層の破断
• コンクリート内部への漏水
• 数年後の大規模防水改修
といったトラブルに発展するケースもあります。
「無料で太陽光が設置できた」としても、
その後に高額な防水工事が必要になる のであれば、本末転倒です。

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太陽光の寿命は20〜30年
防水はそこまで持ちますか?
太陽光パネルは、20〜30年使うことを前提とした設備です。
一方で、陸屋根の防水は築年数や仕様によって寿命が異なります。
特に江戸川区は、
• 河川・海に近い立地
• 風が強い
• 湿気が多い
といった環境条件があり、
防水層の劣化が進みやすい地域でもあります。
太陽光を載せる前に、
「今の防水は、あと何年もつのか?」
を一度確認しておくことが重要です。
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防水のプロとしてできること
江戸ワークでは、太陽光設置を検討されている陸屋根に対して、
• 防水層の状態診断
• 太陽光設置に耐えられるかの判断
• 必要に応じた防水改修(塩ビシート・ウレタンなど)
• 貫通部・固定部の防水処理
• 施工後のメンテナンス提案
といった対応を行っています。
太陽光を 「つけること」 ではなく、
「長く安全に使うこと」 を前提に考えるのが、防水屋としての立場です。

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最後に
江戸川区が始めるこの取り組みは、本当に素晴らしい制度だと思います。
せっかくなら、安心して長く使える形で活かしてほしい。
太陽光の前に、屋根を整える。
防水の安全性を軽視せず、太陽光とセットで考えてほしい。
それが、建物を守る仕事をしている自分からの率直な提案です。
太陽光設置を検討していて、
防水の状態が気になる方は、
“相談だけ”でも大丈夫です。
防水や屋根のことで気になることがあれば、
お気軽に声をかけてもらえればと思います。
株式会社江戸ワーク 飯泉 弘之
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